自動車保険の役立つ情報
日本国民の立場それでは一般の日本国民は、このバブル経済をどのように受けとめていたのか。
これについてはもはや多言を要しないだろう。
エクイティ・ファイナンスに応じた個人は、額面割当てにくらべれば、はるかに少ない株式しか手に人らなくなっており、株式市場は、急速に個人投資家の関心を失っていった。
他方、企業や機関投資家の活発な取引によって、日本の株式市場は、個人持ち株比率が10%そこそこに落ち込むまで「機関化」が進んだ。
こうした性格の市場で株価が高騰しても、大部分の国民にとっては無縁な現象で、むしろ自分たちは「取り残された」と感じられたはずである。
株式市場の動向は無縁のものとして眺められるとしても、「利用」と不可分な地価の急騰は大きな社会問題になった。
もともと日本では、「兎小屋」かもしれない標準的な住宅のための土地、さらにはこれに準ずるマンション価格でさえ、年収と比較して割高であり、購入の動機には、やはり地価の着実な上昇が続くという前提が欠かせなかった。
ところが、かつては標準的住宅の「目安」とされていた年収の6倍をはるかに超える地価の暴騰で、購入価格そのものが現実的範囲を越え、逆にその保有の有無が大きな資産格差に直結してしまった。
持てる者はさらに借入金によるアパート経営、マンション投資などに走り、社会の断絶はいっそう広がった。
「取り残された」と感じた人々の不満は、バブル紳士の度外れた行動を目の当たりにして、深く沈潜し、広範に広がったが、これはバブル消滅への心理的「準備状態」をつくり出した。
89年秋、日米構造協議が始まると、こうした国民の心理とアメリカの対日圧力が共振し、各種メディアを通じて日本社会を揺るがすのである。
「日米構造協議」は、その名の示すとおり、経常収支不均衡を是正するため、双方が相互に経済社会の構造問題を指摘し、話し合おうというものであった。
しかし「双方向性」を謡っていたとはいえ、問題点を声高に指摘されるのが日本の側であることは明らかだった。
「構造協議」の「構造」は、そのまま「構造改革」という言葉に受け継がれ、やがて日本の経済社会に残る根本的欠陥として意識されるようになる。
その意味では、日本社会に対して、当時考えられた以上に大きな影響を残したといえるであろう。
構造協議の応酬は、90年に入って本格化したが、まず、日本の株式市場が姐上に上った。
アメリカ側はずばり斬り込んできた。
閉鎖的な取引慣行、系列などとからめて企業の株式相互持ち合いを問題にし、さらに具体的に、①銀行による株式の保有制限を現行の5%から2%に引き下げる、②総合商社による製造業企業の株式保有の制限または禁止、③子会社による親会社の株式保有の制限強化、などの要求を行って、高株価を成立させている需給条件の基本を瓦解させようとした。
日本の株式市場の特徴となっていた株の持ち合いは、もともとは資本自由化への対策として進められたもので、これはアメリカのように持ち株会社が認められていない制度下での便法でもあった。
もちろん行きすぎれば証券市場自体の機能不全にもつながるため、その是正がいずれは必要であったが、確たる受け皿を用意せず、いきなり持ち合いの解消、というのでは市場の不安をかき立てるばかりである。
90年前半には、この種のアメリカの「要求」が、そのまま主要経済紙一面に大見出しとして躍った。
いうまでもなく、株式市場は心理的要因に影響されるし、それはとくに「不安心理」が高まった場合に著しい。
アメリカがこの協議を通じて発したメッセージは結局、日本の高株価を望んでいないと受けとられるもので、これでは株式は下落するのが当然、「売りが売りを呼ぶ」展開にもなるだろう。
これが90年初めからすでに下落の始まっていた証券市場の不安感を高め、崩落を加速させたのである。
土地については、アメリカは「土地戦略ノート」を用意していたとされる。
これに基づいて大都市近郊の農地などに見られる開発・利用の不足、国民の土地保有志向の強さやこれを助長している税制のあり方など、さまざまな「歪み」の是正を迫った。
日本の高地価がアメリカにとって脅威の源になっているという認識に立った指摘ではあったが、これによって住宅の質を高め、国民の生活水準を向上させるためという表現がとられており、その日的自体に抵抗することは難しかった。
アメリカの要求は国民に内在していた土地の値下がり願望に根拠を与え、やがてこれが激しい土地バッシングにつながってゆく。
もっとも、構造協議の結果を見ると、日本側が直接、個々の問題を解決すべく新たな立法措置を講ずるといった局面は少なかった。
そればかりか、アメリカは、日本の高地価が米国債への投資を支えてもいることを認識したためか、徐々に要求を公共投資増額の方向へとシフトしていった。
日本の社会資本の不足を指摘して、貯蓄投資バランス論から政府部門の赤字増大による経常黒字の縮小をせまり、日本は、10年間に430兆円の公共投資を対米公約することになったのである。
このようにして予算編成にまで踏み込まれた結果が、財政の破綻にもつながってゆく。
だが、ここではそのことよりも、日米構造協議が、90年に始まるバブル経済の崩壊に与って力あった、そのメカニズムの裏側にひそむ問題を少し考えてみたい。
80年代末のバブル経済が私たちに残した教訓の一つは、マネー経済の成熟が、資産の保有で潤い、生活基盤が安定したと感じられる層を増大させることにあったとするならば、日本の資本主義は、まさにこの「ストック経済」の時代に、それに失敗しつつあったということである。
バブル経済は、むしろ逆に個人から法人へ富の移動を促し、経済の発展から国民を疎外する役割を果たした。
そして疎外された「声なき日本国民」に働きかける形で、日本異質論を背景とする構造協議が展開され、メディアもまたアメリカ側に寄った姿勢をとったために、日本の経済システムへの国民の信頼感は内部から崩壊していった。
その後の日本国内の議論を眺めると'アメリカ側にとっては、ここにこそ構造協議の最大の成果があったといえそうである。
大きかった世論の振幅余談になるのだろうが、日本における経済変動とそれに対する世論の動きには、次のような共通した傾向を見ることができるのではないだろうか。
まず、大きな好況の過程では、それによってもたらされる生活パターンの変化がジャーナリズムで大きく取り上げられ、デモンストレーション効果によって、さらに好況を加速する。
ところが、これがある限度を超えると、経済に対する正反対の態度が表面に現れ、従来内包されていた矛盾や問題点に焦点があてられる。
ここに新しい「流れ」が生まれ、山本七平氏の言う日本独特の「空気」を醸成することになる。
その矛盾や問題点について明白に責任のある当事者が容易にそのことを認めないため、糾弾は激しさを増し、時に感情的になって、経済社会の亀裂を押し広げてゆく。
こうした振幅の大きさは、高度成長期の「歪み」が顕在化した60年代末にも一度、現れている。
この時期は、経済成長の副産物として物価が上昇し、加えて公害病の発生に見られるように環境の悪化が表面化した。
企業は空気や水の汚染源として集中砲火を浴びることになったが、そのために環境庁が新設され、種々の公害規制が立法化されるなど、それなりの効果をあげることができた。
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